頭に潜む「楽器」の鳴らし方

ちょっとこの写真をみてほしい。何だかおわかりだろうか?

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http://enandis.com/en/designs/megaphone.html

これはiPhoneを右上の吹き口に差し込んで、音を自然に増幅させるアイテムだ。イタリア製でデザインもなかなか美しく、ちょっと楽器のようにも見える。材質はセラミック。Megaphoneという商品名は、一見ベタなようだが「メガホン」と「電話」のかけことばになっている。

スマホの小さな音も、このような共鳴体を使えばアンプなしでも結構大きな音になる。電気を使わないこうした増幅の仕方は、英語ではパッシブ・アンプリフィケーションと呼ばれている。ごくシンプルな仕組みだが、多くの管楽器は基本的にこれで音を大きくしている。昔の蓄音機もこの原理を使っていた。こうした簡易メガホンの仕組みは、そのまま人間の声を出す仕組みにも当てはまるに違いない。

ある日ふとこの写真を目にした僕は、「これだ」と直感した。僕はこれまで、口と鼻を共鳴体としてどう使うか、という問題をずっと考えてきたのだが、その原型がこれではないか、と感じたのだ。この製品では音の出口は1つしかないが、まあこれは口と鼻を一体化させたものと考えればいいだろう。適当に中に間仕切りを入れれば、人間の口腔と鼻腔と同じようなイメージになるはずだ。それよりも僕が強く興味を感じたのは、吹き口のポジションだ。上から斜め下に向かって音を吹き込むような形になっている。

前回も述べたとおり、鼻メガホンをうまく使うには吹き口のポジションを高くとる必要がある。口蓋垂や口蓋帆の後ろから息を吹き込むことで、口だけでなく鼻もメガホンとして活用できるようになるからだ。上の写真でiPhoneが差し込まれている部分は、まさにその理想的な吹き口のポジションなのだ。

自分の後頭部に、貯金箱のコイン投入口に似た大きな切れ目が水平に開いている様子を想像してみてほしい。そこにスマホを斜めに差し込むと、鼻の奥のちょうどいいポジションにスマホの底のスピーカー部分がくる。そこを吹き口として、口と鼻の両方をメガホンとして機能させるイメージだ。

この角度で吹き口を設定すると、いやでも鼻メガホンにも息が入らざるを得ない。もちろん一部は口メガホンにも向かう。だから自然と鼻・口両メガホンが同時に響くのだ。

これに対し、日本語では一般に吹き口がのどの奥の低い場所に設定されていて、角度はやや上向きである(下の青いメガホンの感じ)。息は口メガホンだけを鳴らすために使われ、鼻メガホンにはほとんど息が入らない。

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https://www.ring-g.co.jp/item/10000184.htm

多くの人が抱える問題は、高いポジションに普段とは別の吹き口があることをまったく認識していない、という点だ。だから、英語で多用される鼻メガホンは眠ったままになっている。低い吹き口のままいくら英語らしい声を出そうとしても、そもそも息の通り道が違うのだからうまくいくはずがない。のどで発声せよ、などと言われてもうまくいかないのは、のどを意識している限り吹き口の位置は低いままで、鼻メガホンが使えないからだ。どうせならのどではなく、鼻の奥に意識を移したほうがよほどうまくいく。腹式呼吸をしなさい、などというアドバイスもそれと同じで、吹き口の高さが低いままだったら腹式呼吸なんかやっても何の意味もない。実際は順序が逆で、吹き口を高い位置に保持しようとすれば、いやでも腹式呼吸になるのだ。

まずはこの吹き口のポジションの違いをしっかりと意識に植え付けよう。そして、高い吹き口から鼻と口の両方に息を吹き込む、という、従来日本人にはあまりなじみのなかった感覚に、一刻も早く慣れることだ。

これができるようになると、英語だけでなく日本語の発音・発声も見違えるように変化する。好き嫌いはあるかもしれないけどね。そういえば最近のナレーターやアナウンサーなどの声を聞いていると、日本語でもすう勢として鼻メガホン系の声が勢力を伸ばしつつあるようだ。これを日本語として聞きやすくするには、特に子音に関して英語と少し違う工夫が必要だが、吹き口の高さの違いを克服する困難に比べれば、さほど難しいことではない。

もちろん歌声も劇的に変化する。発声が見違えるほど楽になり、声域も広がるのだ。

僕たちはみな鼻と口といういい楽器を持っている。だから、その両方を自然と響かせるように努力したほうがいい。チープなプラスチックのメガホンで応援団みたいに力んだ声を張り上げ続ける必要はどこにもないのだ。声はもっと楽に出る。変えるべきものはただ一つ、頭の中の意識だけである。

 

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な お、このブログで公開しているメソッドは僕が苦心してたどりついた知的財産なので、無断借用はしないようお願いしたい(もちろん個人で発音改善などに利用 される分には大いに歓迎するが)。以前僕が別のブログで音読について綴ったことを黙って本に盗用した人がいて、遺憾に思ったのでひと言。