Monthly Archives: June 2014

「鼻メガホン」の使い方

再び子音の話に戻ろう。thやl、rなどの発音のコツとして、舌を魚にたとえたのはご記憶のことと思う(細長いヒラメ、ウナギ、エイなど)。

これらの発音の完成度をさらに高める上で、僕的にはかなり役立っているコツがもう1つある。

どうするかというと、舌を魚にたとえたイメージはそのまま生かしながら、魚のしっぽの部分を頭に置き換えてしまうのである。あるいは、魚の体の後ろ半分をちょんぎって、そこに前半分のクローンを継ぎ足すようなイメージだ。つまり、舌はしっぽがなくて前にも後ろにも頭がある魚、と想像してみるのだ。

僕たち日本人の常識では、舌は常に前向きだし、息も常に前に出すのが当たり前だ。それ以外の息の出し方は、たぶん考えたこともない人がほとんどではないだろうか。

そこが最大の盲点なのだ。

僕たちは小さい頃から、息はのどの奥から口の真ん中を通って前へ吐き出すものだ、と信じ切ってきた。だから声を出すときの息の通り道といえば、野球の応援に使うプラスチックのメガホンみたいな形を思い浮かべる人がほとんどではないだろうか。

これはカナ縛り発声のアーキタイプ(元型)と言ってもよいほどパワフルなイメージで、容易には突き崩せないものである。

この単純なメガホンのイメージが頭に残っている限り、声を出そうとすると必ず息のルートが前だけを向いてしまい、そのまま音量を上げようとすればのどに力が入らざるを得なくなる。

その弊害が最も顕著に表れるのが、英語の子音を発音するときだ。

日本人が英語の子音を発音しようとするときは、必ずといっていいほど口先の部分に意識が集まってしまう。すでにthやrでも説明したが、僕たちは子音をつい口先から出す息に乗せようとしてしまいがちなのだ。これはほとんど本能的といってもよい。

日本人は子音が弱い、などという指導者も多いようだが、そういわれて僕たちがいくら口先に息を集めて圧力を高めてみても、どうも聞こえてくる音の質がほんものとは違うのである。(これは日本人の合唱練習などでもよく見かけるパターンで、「もっと子音を強く」と言われると、誰もが判で押したように口先部分の息圧を強めて発音するのだが、これでは決して納得のいくサウンドは得られない。)

ほんものに近いサウンドを出すにはどうしたらよいか、いろいろ試行錯誤を繰り返した結果、僕はあるかなり有望な仮説に到達した。英語では(そしてたぶんその兄弟分のヨーロッパ言語の多くも)、声の出口として口だけではなく鼻腔も使っていて、鼻はエコーを付ける役目を果たしている、という考え方である。

日本語は口をプラスチックのメガホンのように使う、というイメージを上で述べたが、これに対し、英語はメガホンを2本使うイメージだ、と提唱したい。1本は口のほうに向かい、もう1本はいったん口の奥に戻った後で上に曲がりながらUターンし、鼻腔を通って前に向かう。最後は上下平行に鼻と口からサウンドが出てくるイメージである。

voice2

多くの日本人は、通常ほとんどこの「鼻メガホン」を使わない。だが英語では、鼻メガホンがたいへん重要な役割を果たしている。これをいかにうまく使いこなすかによって、英語らしいサウンドが出るか否かがほぼ決まるのである。

人間は、どの国の人でも同じだが、リラックスして軽く口を開けたまま息をすると、自然に口と鼻の両方から息が出入りするようにできている。なので、この人間本来の息の出し方に準ずるならば、自然と声も鼻と口の両方から出るはずなのだ。しかし日本人は言語の文化的背景から、口を通る声の成分ばかりを偏重し、鼻を通る成分は最小限に抑えてきた経緯がある。だからのど声が好まれる一方、英語の発音は苦手な人が圧倒的に多い。

なので、鼻メガホンを使うことには最初かなり抵抗のある人が多いに違いない。それを徐々に取り除いていくのがとりあえずの目標だ。

そのとっかかりとしては、子音から入るのがいちばんいいと思う。

先にも述べたが、日本人は子音を口先で作りたがる。シーッとかシュッとか、強く言おうとしてみればわかる。しかし、実はこのとき鼻メガホンは最初から完全に閉じられた状態なのだ。

これに対し、英語では驚いたことに強い子音を発音するときでも、鼻メガホンを閉じないのである。子音が強ければ強いほど、鼻メガホンを経由して出てくる成分も強くなるのだ。僕たち日本人の耳には口先だけで強く子音を発音しているように聞こえるかもしれないが、実は英語では鼻メガホンも口メガホンとほぼ同じ強さで鳴らしていると思ってよい。鼻メガホンの役割はエコーを加えることだが、エコーと基音とを完全にシンクロさせることで、音がより豊かに増幅されて聞こえるのである。

肝心なのは、口と鼻のメガホンから出る音を完全に同期させることにある。このバランスがとれていないと、鼻声に聞こえたり口先だけの声に聞こえたりする。

では、どうすれば口と鼻のメガホンを簡単に同期させられるだろうか?

そこで活躍するのが、冒頭に述べた前にも後ろにも頭のある魚のイメージである。舌の中央から前と後ろが、鏡で映したようにまったく同じになっている、と想像してもよい。

舌の上の息の流れもまったく同様で、舌先から前に息を出す際には、同時に舌の後ろ側で口の奥に向かって同じ量だけ息を送るように意識するとよい。舌の中心から、前後にそれぞれまったく同じ量だけ息を送るイメージである。どちらが前でどちらが後ろかわからないくらいにすることがポイントだ。こうすることで、口と鼻のメガホンを通る息のバランスが保たれる。そして、口と鼻から出る音がぴったりシンクロして響き合うのである。

子音を発音するときに、僕たちはつい舌の先端の動きばかりを意識してしまうが、そのとき同時に舌の後ろ側もまったく同じように動かすことを意識すれば、前後のバランスがとれるのである。

sを例にとってみよう。ssss-と子音だけ伸ばしてみる。日本語で「スー」とイメージすると、たいてい口からしか子音が出ず、舌の先端あたりだけで摩擦音が鳴る感じになってしまう。これではまずいので、次に舌の後ろでも同時にsを作るように試みてほしい。舌の先端と後ろで同時に逆方向にsを発音するような感じだ。

後ろ向きのsは、口の奥から上に向かって鼻の奥に入り、Uターンして鼻から出てくるイメージである。これを意識するだけで、もうあなたの息は自然な響きを獲得し始めている。今までのように息を前に出すことばかりを考えるのではなく、半分を後ろに送ってから鼻へ向かわせるよう意識することで、のどの力みがとれ、弛緩したいい状態になるのだ。

ついでに f も試してみよう。日本人は、下唇を噛んで上前歯とのすき間から強く前へ出す音が f だと思っているが、このセオリーに縛られているといつまでたってもハイクオリティーの f は得られない。上に述べたように、鼻メガホンの入り口のほう(後ろ向き)にも同じく強めに息を送るようにすることが肝心なのだ。

なぜかというと、こうした子音は母音を導入する役割を担うので、母音が響きやすいようにコンディションを整えることが求められるからだ。口先だけで子音をいくら強く発音しても、その後に続く母音はのど声にしかならない。しっかり鼻メガホンにも子音を響かせておくことによって、次の母音にも豊かな響きが確保されるのだ。

これとまったく同じ要領に従えば、v もすぐにうまく発音できるようになる。口先だけで強く摩擦音を出そうとするのではなく、口の奥のほうでもミラーイメージのように v の音を送るように意識してみよう。奥に向かった影の子音は、鼻メガホンを通って最後に口からの子音と合流し、互いに強め合う。そして続く母音もより豊かな響きを得ることになる。

音声サンプル sound – fine – very

この口と鼻の二重唱を絶えず保つことが、従来の日本語にはなかった英語的な響きを紡ぎ出すヒケツといってもよい。

 

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な お、このブログで公開しているメソッドは僕が苦心してたどりついた知的財産なので、無断借用はしないようお願いしたい(もちろん個人で発音改善などに利用 される分には大いに歓迎するが)。以前僕が別のブログで音読について綴ったことを黙って本に盗用した人がいて、遺憾に思ったのでひと言。

「発声ポジション」についての補足

ちょっとだけ子音から離れて、発声ポジションについて補足しておこう。これまで発声について説明してきた内容と重複するかもしれないが、少し角度を変えたアプローチをとってみるのもいいと思うので。

英語では日本語よりも発声ポジションが高い、と何度も述べたが、「発声ポジション」という言葉についてはちょっと説明不足だったかもしれない。

この言葉でいいたいのは、息が声に変わるポイント、という意味である。僕が考え出した概念で、あくまでイメージではあるが、発声の補助テクニックとしてはけっこう使えるのではないかと思う。

物理的には、肺から気管支や気管を通って出てくる息は、声帯を経てはじめて声になるので、声帯のある場所(=のどの奥)が発声ポジションでなければならないはずなのだが、たとえばクラシックの声楽では、特にのどを強調することはしない。むしろ逆に、のどをリラックスさせることが鉄則となっている。これはなぜだろうか?

人間の体感というのは不思議なもので、のどを意識すればするほどかえってのどが緊張し、のびやかな響きが出なくなってしまうのだ。

だから、クラシックの声楽指導ではのどにはほとんど言及しない。むしろ頭の後ろだの、鼻腔だの、額だのと、まるであらぬ方向に響きを向けさせようとする。そして、歌うときにはのどのことなど忘れてしまうくらいに力を抜くことを目指すのである。

英語の発声も、これと大いに通じるところがある。ただ日本人にとって難しいのは、日本語ではのどに力を入れる発声がデフォルトなので、僕たちは母音や子音をはっきり発音しようとするだけでついのどに力が入ってしまうのだ(これが「カナ縛り」である)。

これを打破するためには、日本語での発声ポジションと英語の発声ポジションの違いを明確に意識する必要がある。そこで、肺から出る息がどこまで息のままで、どこから声に変わるかを、自分で意識しながら探ってみるとよい。そしてさらに、ハミングしながら息が声に変わるポイントをいろいろと変えてみよう。

声になる前の息が「無色透明」だとすると、声になったあとの息には「色」が加わる、とイメージするとわかりやすいかもしれない。自分の息がどこで声に変わるかを意識し、そこではじめて息が無色からカラーになるさまを想像する。その変化が起きるポイントが、発声ポジションというわけだ。

あるいは、息が声に変わるときに光を放つ、というイメージを持ってもよいだろう。息が発声ポジションを通過した途端に、まばゆく光り輝き始める様子を思い描くのである。どちらも目的は同じなので、自分に合ったイメージを選んで練習すればよい。

まずは常識的に(というか日本語的に)、のどで息が声に変わる、と意識してハミングしてみよう。のどのあたりで息が無色から自分の好きなカラーになったり、息が光り始めるようなイメージだ。

次に、発声ポジションをのどよりやや上、口の奥あたりまで上げてみる。息がのどを通り過ぎてもまだ声にはならず、口の奥に達したところで初めて声に変わるよう意識しながらハミングしてみるのだ。無色透明な息が、口の奥まで来たところでカラーになったり光り輝くような様子をイメージしてみよう。

やってみると、違いがかなり実感できるのではないだろうか。発声ポジションを少し上げるだけで、もうのどの奥はだいぶ力が抜けているのである。ただし、今やったポジションで発声していると、のどの入り口が緊張したままなので、浅い平べったい声にしか聞こえない。

そこでさらに、発声ポジションをもっと上に、そしてより前へと移動する必要がある。鼻の中、あるいは鼻先、さらには鼻の前ぐらいに発声ポジションを置いてみるといい。そのポイントまで息は無色透明のままに保ち、そこから息に色やまばゆい輝きが付くかのようなイメージだ。繰り返すが、設定した発声ポジションに息が達するまでは息を声にせず、無音ないし透明のままに保つよう意識すること。のどを入り口から奥まで完全にリラックスさせることが、この練習の目的なのだ。

(現実にはありえないことだが)声帯がのどではなく鼻の付近にあるかのように意識することで、のどの力が抜けた発声が容易にできるのである。これが僕の言う第二の声帯、あるいは声帯のツボなのだ。

さらにいうなら、子音が作られる場所(口内や唇)よりもさらに遠くに発声ポジションを置くことができればもっとよい。常識では、まず声があって、それが子音を後押しする格好になるんだろうが、それではのどが力みがちになる。だから、あえて自分をだますのである。子音の発音ポイントよりも遠くに発声ポジションを設定すれば、自然と力みのない声が出せるようになるのだ。ちなみに声楽では、声をさらに遠くに飛ばす(すなわち発声ポジションを自分のはるか前方に置く)ことも、当たり前のように説かれている。(これは英語による発声指導ではprojectionという用語で説明されることが多い。)

「発声ポジション」という考え方は、あながちでたらめではない。昔の蓄音機は、電気を一切使わないにもかかわらず、針先の振動を音響的に増幅して結構大きな音を鳴らすことができた。振動しているのはレコードに触れる針先なのだが、そこでは音はほとんど聞こえない。共鳴管を通ることで、はじめて耳に聞こえる音になるのである。つまり、音になるポイントは共鳴体を通過するところ、あるいはその先なのだ。

人間の体も同じで、声帯から出る音はごく小さく、そのままでは聞こえない。息が体を通ってしかるべく共鳴を獲得しながら成長し、最後にちゃんと聞こえる声になるのである。そう考えれば、声帯が発声ポジションではないことは明らかだ。いくら一生懸命になって声帯をふるわせようとしても、効果はないのである。同じく、のども発声ポジションではありえない。共鳴体をいろいろ経た後、最後に蓄音機のラッパ管のように出てくるところ、あるいはその先が、本当の発声ポジションになるのだ。「発声ポジションはのどではなくもっと高いところにある」と僕が口をすっぱくして説いてきた理由は、そこなのである。

日本語は主に口をラッパ管に使うが、英語では鼻腔もかなり併用するので、同じラッパ管でも発声ポジションはもっと上になる。なので、その場所から最も豊かに響きが出てくるようにしよう、というのがハイポジションでの発声を目指す理由の1つなのだ。

この近辺に発声ポジションを意識し、そこではじめて息が声に変わるようにイメージしていけば、のどは完全にリラックスし、遠からずのど声から脱却できるはずだ。

世間には「発声はのどの奥でやる」と思っている人が少なくないようだ。声帯はのどの奥にあるんだから当然のようにも思えるが、前述のとおり実はそこには大きな落とし穴が潜んでいる。この一見もっともらしい理屈に縛られて、かえってのどから力が抜けなくなってしまうのだ。加えて、日本人は元来のど声が好きなので、二重にがんじがらめになりやすい。だからある意味、頭を柔らかくして理性と闘うぐらいの決意をしないと、リラックスした発声はできない。

ではどうするか。「のどで発声するのではない!」と自分に言い聞かせ続けることだ。これは英語でも声楽でも鉄則だと思ってほしい。のどの入り口だろうと奥だろうと、のどは発声には一切無関係だと信じ切ることだ。カナ縛りとの葛藤も加わるので、ここがほんとうの天王山になるのだが、いったん克服できると面白いほど簡単に声を響かせることができるようになる。だからぜひ探究してほしい。(完全に無理のない発声を習得した後は、わざとのどに力を入れて声色を変えたりすることも自由自在になるが、それまでは決してのどに力を入れないことを心に誓ってほしい。)

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rとlの発音をマスターする極意

前回の内容を読んで実践していただければ、もうrもlもマスターできたも同然なんだが、もう少しだけ説明を加えておこう。

日本人がrとlの発音を苦手としている原因は、いったいどこにあるかおわかりだろうか?

それは、「子音は開いた口の正面中央から出す」という暗黙の了解が日本語にはあるからだ。

たとえば「あ・か・さ・た・な・は・ま・や・ら・わ」と五十音の最上列だけ読んでみればわかるように、僕たち日本語ネイティブスピーカーは母音(たとえば「あ」)で開いた口の中心に子音を作ろうとする傾向が強い。こうしたほうが、母音と子音が一体化して明瞭に聞こえるからだ。

d, k, sなどの子音は、舌の出る幕が比較的少ないので、こういう日本的な発音に当てはめても破たんしにくいのだが、やっかいなのはthをはじめlやrなど、本来は舌をセパレーターとして使って左右にステレオで息を出しながら発音する子音だ。

僕たちの日本語的な本能からいうと、子音を発音するときに舌が口の真ん中にでしゃばってきて中央をブロックするなんて、邪道もいいところだ。ところが英語では、舌を息のセパレーターとして機能させないと正しいthやlやrは出せないのである。

日本人がthやlやrの発音が苦手なのは、まさにこの葛藤からきている。それでいて、この葛藤に気づく人はあまりにも少なかった(というか、誰か気づいた人がいただろうか?)だから僕たちは、舌が命のthやlやrを発音するときでも、つい舌を出動させるのをためらってしまうのだ。しかも、出動の方法も大抵間違っている。このままでは、ほとんど手の施しようがない。

とすると、日本人にこうした子音をちゃんと発音させるには、ちょっとした荒療治が必要かもしれない。

(ただし前提としては、上あごから上だけを使って発声するハイポジション発声が求められるので、それもいっしょに練習しておいてほしい。mやnのハミング練習は特に大事だ。)

荒療治のやり方はいくつか考えられるが、とりあえず1つだけ紹介しておこう。

最初に、nでハミングしてみる。このとき、舌先は自然と口蓋と前歯の根元あたりに付ける形になるはずだ。舌全体は、口をブロックする格好になっている。決して無理に口から声を出そうとせず、むしろ自然に鼻腔から出るにまかせるようにする。なるべく高いポジションから声が出ていくようにするのである。

それと同時に、舌の両脇を意識してみよう。息が舌の両脇の上を流れ、左右2本の気流となって鼻のほうへ抜けていくさまを想像してほしい。nのハミングは、こうして舌の両脇から鼻のほうへ抜ける2つのステレオ気流が生み出す音だ、と考えてほしい。このとき、息が口の正面に向かうような動きはまったくない。もし口の正面に息を向かわせている自分に気づいたら、方向を修正して、もっと気流を鼻腔に向かわせるようにする。そのほうが、ハミングの響きも豊かになるのだ。

それから、息が声になるポイントは、息が鼻から出ていく直前ぐらいだと考えてほしい。決してのどで声を作ってから鼻へ送ろうなどとはしないこと。これはのどに力が入る原因になる。発声ポジション(第二の声帯、あるいは声帯のツボ)はあくまで高く、鼻の付近、顔面に近い場所にあるのだ。

さて、ここでlの練習に移ろう。舌は先端をややすぼめて上前歯の裏に軽く当てる。そして、舌の左右両端から鼻腔に向かう2本の気流を意識しながら、息を送る。そして鼻の付近で左右2本の息を声に変えて、lを発音する。

注意してほしいのは、舌の左右から舌の裏側に息が回り込まないようにすることだ。もし息が回り込んでしまうと、その先は口の正面から逃がすしかなくなる。日本語の子音ならば口の正面から音を出すのが筋なのだが、あいにく英語のlではそこは使わない。口の正面は実質的にブロックしながら、あくまで左右にステレオで息を流すことが、正しい英語のlを響かせる必須条件なのである。

荒療治として、lを発音する口や舌のフォームを作ったあと、人差し指を立てて上下の唇に触れさせてみよう。そして、lの音が人差し指に当たることなく、その左右に分かれてステレオで出て行くように発音するのだ。

すでに舌がセパレーターとして口の中で立ちはだかっているのだが、日本人の本能としては、子音を口の正面で出したくってうずうずしてしまう。だからつい舌の両端に息を回り込ませて、正面に息を出そうとする衝動が働くのだ。それを抑えるためにこの荒療治をやるのである。

いくつかlで始まる単語を発音しておこう。

音声サンプル(lead, light, lest, law, lootの順に、2回繰り返す。カナ縛り発音の例は今回省略する)

では、rはどうだろうか。前回指摘したとおり、rは舌の両脇をlよりダイナミックに動かして発音する点が違うが、口の正面からモノラルで音を出さない、という点はlと共通している。なので、先ほど述べた荒療治がそのまま使える。

従来の指導で多かった「舌の先端を内側に巻き込んで前に展開させる」ような前後の動きをしていては、日本語的なrの発音にしかならないので、これは封印しよう。むしろ、舌の左右両端をエイかマンタのヒレのようにゆっくり羽ばたかせる動きを意識したほうがいい。

先ほどのように、人差し指を立てて上下の唇に触れさせたまま、舌の両端を羽ばたかせるようにrを発音してみよう。立てた人差し指に声が当たらないようにすること。しっかり左右に音をセパレートさせ、なるべく高いポジションから音が出るようにする。

音声サンプル(read, right, rest, raw, root 同上)

最後に、lとrの比較練習をしておこう。lの舌の形は、エイではなくウナギかアナゴのようにまっすぐでヒレがない。その左右をするりと息が抜けていく感じは、rのヒレが生み出す抵抗感と比べるとはっきり違いがある。その差をよく意識して自分のものにしよう。

これができれば、あなたのrとlの発音にはもう文句のつけようがなくなるはずだ。

(ちなみにthの舌の形はlとrの中間で、魚にたとえれば細長いヒラメだろうか。左右の縁側が息に多少の抵抗感をもたらすが、rほど顕著ではない。)

音声サンプル(lead – read; light – right; lest – rest; law – raw; loot – rootを1回ずつ、最後に応用としてa real thriller)

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