th発音と舌の関係

先日述べたth発音のコツがうまく作用するとしたら、それはなぜだろうか。分析してみると、理由はいくつか考えられる。

1. 舌を噛む力が弛んで下あごが脱力できたこと。
2. 舌先がすぼまって両脇にスペースができ、息が左右にステレオ感覚でリリースされたこと。
3. 舌全体を前に突き出そうとする衝動が抑えられ、逆に舌先だけを軽く出してあとは引き気味にする構えができたこと。
4. その結果、舌の付け根(のどの奥)の左右がリラックスし、カナ縛りが解けたこと。

どれも重要なポイントだが、共通項を探すなら、舌を最大限リラックスさせたまま要所にだけ必要最低限の力を入れる、ということだ。thの場合、要所はやはり舌先だ。舌先はあまり左右に平たく広げず、逆にやや丸くすぼめながら前に出す。このとき舌先を力ませないこと。すぼめた舌先がリラックスできるよう、舌先は突き出したままにせず、むしろthを発音しながら軽く後ろに引くぐらいにするとちょうどよい。引き気味の舌先の両脇あたりを息が前にすり抜けていくようにすると、そのコントラストで子音がより明確になる。音を前に出そうと意識すると一緒に舌先もせり出しがちになるが、これでは力みが入って逆効果となる。

僕の体感では、次のように意識するとうまくいく。すぼめた舌を、中が空洞になった筒であるかのようにイメージするのである。そして、舌先の左右を息が出ていくのと反対に、舌の先端からは逆に空気を吸い込むようにしてみる(もちろん非現実的だが、こうしたイメージは大切なのだ)。こうして吸い込まれた想像上の空気は、舌を内側から満たしながらお腹へとつながっていく感覚だ。こうすると、舌全体が必要なフォームを保ったままリラックスしてくれる。

thに限らず英語を発音するときは、常に上に述べたようなポイントを守るようにするとかなり効果的だ。それさえ意識しておけば、日本語とはまったく異なる舌のデフォルト状態を作り出すことができるので、無理なく英語らしい響きで発音することが可能になるのだ。少なくとも僕はこれを実践して効果を実感している。thの発音は、この英語的なデフォルト状態を確認する上でとても重宝する。日本語をしゃべっているとつい日本語的デフォルト状態(カナ縛り)に戻りやすい。それを解除して英語音声に切り替える上で、th発音の存在は便利きわまりないのだ。

もうひとつ付け加えたいのは、息が上あご(特に口蓋)の左右に沿って流れるようにする、という点だ。下あごでもなく、上あごの中央でもない。あくまで上あごの左右を意識しよう。息の流れが下あごや口の中央に向かうのは、カナ縛り状態がのさばっている証拠なのだ。

ハミングだけやっているぶんには、口の中での息の流れはほとんど気にする必要がなかったが、子音の発音ではこれが無視できなくなる(口から息が出るからね)。気をつけないと、日本語的な子音の作り方(これもカナ縛り)にとらわれて、せっかくハミングで練習した高いポジションでのリラックスした声が生かせなくなってしまうからだ。徹底した舌のリラックスを併用しながら口の中の息の流れをうまく英語的にコントロールすることが、子音発音の最重要課題なのだ。

従来このようなポイントを注意しながらthを発音するよう指導してくれた人は、僕の知るかぎり存在しない。むしろ僕のいうテクニックは、従来の指導法から見ればぶっとんでいるように見える部分も多いと思う。しかし実効性を考えると、今後はたぶん僕の示した方向性が主流となるだろう。そうならなければ、日本人の英語発音はいつまでも袋小路で足踏みを続けるだけなのだ。

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なお、このブログで公開しているメソッドは僕が苦心してたどりついた知的財産なので、無断借用はしないようお願いしたい(もちろん個人で発音改善などに利用される分には大いに歓迎するが)。以前僕が別のブログで音読について綴ったことを黙って本に盗用した人がいて、遺憾に思ったのでひと言。