Monthly Archives: July 2014

天窓ガラスと鼻メガホン

前回述べたように、従来の日本語はのどから口へストレートに声を出そうとする傾向が強い。その結果、使うのは口メガホンだけで、鼻メガホンはほとんど休眠状態となっている。

たとえば窓ガラスを拭くときに、こびりついた汚れにハーッと息を吹きかけて曇らせる場合を考えてみてほしい。このハーッという息は、のどからストレートに出てくるもので、日本語の「ハ」の出し方とほぼ同じだ。

ところが、英語でHa!とかHuh?とかHi!とかいう場合には、出し方がこの「ハ」とは明らかに違う。もっと高いポジションの吹き口から、鼻と口の両方のメガホンに同時に息を通すように発音するのだ。

そこまでは前回説明したとおりだ。しかし、この違いをもっと日本人に体感しやすい形で説明する方法はないだろうか。

そこで、こんなことを考えてみた。ガラス拭きで「ハーッ」と息を吹きかけるとき、のどから上がってきた息は前向きに方向転換する。これはごく普通にやっていることなので、僕らは普段この方向転換を意識してはいないが、このとき息は、のどから出たところで上方向から前方向へと向きを変えているのだ。「ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ」はどれも同じで、僕たちは息を前にはっきり方向転換させてから、口の前のガラスに吹きかけるように発音しているのである。

では、窓ガラスが口の前ではなく、口腔の天井(口蓋)にあるとイメージしたらどうだろうか。この想像上の天窓ガラスに、ハーッと息を吹きかけてみよう。息を前に方向転換していては、天窓には当たらなくなってしまう。だから肺から上がってきたそのままの方向で、口蓋の奥を覆う天窓ガラスを曇らせるように、上向きにハーッと息をかけるのである。できれば息がやや上後方に弓なりに反るぐらいでちょうどいい。前方向のガラスを曇らせるのと要領は同じだが、息の方向を変える必要がない分だけ、無駄な力はいらなくなる。そして、口の前方向へはあまり息が出て行かない。息の一部は鼻を通って出て行く。

これをもっと短時間でやると、従来の日本語の「ハ」とはちょっと違った、鼻メガホン系の「ハ」になる。天を突くハなので、これをもじって点付きのハ、すなわち「ハ’」と表記しておこう。

同じように、口蓋の奥に設けた天窓のガラスを息で曇らせるような要領で、ハ’、ヒ’、フ’、ヘ’、ホ’と発音してみよう。頭のてっぺんの天窓ガラスに向かってはっきり「ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ」と言うようなイメージだ。無理に息を前に向けようとせず、ひたすら天に向かって息を送るのである。このイメージを使うと、普通のハヒフヘホとの違いがわりと簡単に実感できるのではないだろうか?

このとき何が起こったかというと、息の方向が前から上にシフトした結果、メガホンの吹き口がのどから口蓋付近にまで上昇したのである。「ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ」は息がのどから前に出て口メガホンだけを使っていたのに対し、「ハ’、ヒ’、フ’、ヘ’、ホ’」では、高い位置に上った息が口腔や鼻腔のカーブに沿って自然に方向転換し、一部は鼻メガホンに、一部は口メガホンに向かうのだ。

日本語では息を前向きにして口から出そうとする傾向が強く、「はっきり発音する=息を前に向ける」という図式が、小さい頃から僕たちの頭に擦り込まれている(これこそ「カナ縛り」である)。しかも、それをあまり自分では意識していない。だから鼻メガホンを多用する英語や西洋の声楽などに接すると戸惑ってしまい、違いがよく分からないまま日本語流ののど声で通す結果になる。ところが実は、天窓方向を意識しさえすれば日本語のカナ縛りは解け、まったく違った鼻メガホン系の響きが得られるのだ。

どうせなら日本語の五十音の発音の向きを徹底的に天窓化してみるとよいかもしれない。従来の日本語の発音は単に1つのやり方に過ぎないことが分かれば、もっといろんな可能性に目を向けることができるはずだ。そうすれば日本語の音声表現の幅も広がるだろうし、高位置の吹き口から鼻・口両メガホンに息を通す、という英語の発音・発声の基本形にも無理なくたどり着けるだろう。

 

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な お、このブログで公開しているメソッドは僕が苦心してたどりついた知的財産なので、無断借用はしないようお願いしたい(もちろん個人で発音改善などに利用 される分には大いに歓迎するが)。以前僕が別のブログで音読について綴ったことを黙って本に盗用した人がいて、遺憾に思ったのでひと言。

頭に潜む「楽器」の鳴らし方

ちょっとこの写真をみてほしい。何だかおわかりだろうか?

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http://enandis.com/en/designs/megaphone.html

これはiPhoneを右上の吹き口に差し込んで、音を自然に増幅させるアイテムだ。イタリア製でデザインもなかなか美しく、ちょっと楽器のようにも見える。材質はセラミック。Megaphoneという商品名は、一見ベタなようだが「メガホン」と「電話」のかけことばになっている。

スマホの小さな音も、このような共鳴体を使えばアンプなしでも結構大きな音になる。電気を使わないこうした増幅の仕方は、英語ではパッシブ・アンプリフィケーションと呼ばれている。ごくシンプルな仕組みだが、多くの管楽器は基本的にこれで音を大きくしている。昔の蓄音機もこの原理を使っていた。こうした簡易メガホンの仕組みは、そのまま人間の声を出す仕組みにも当てはまるに違いない。

ある日ふとこの写真を目にした僕は、「これだ」と直感した。僕はこれまで、口と鼻を共鳴体としてどう使うか、という問題をずっと考えてきたのだが、その原型がこれではないか、と感じたのだ。この製品では音の出口は1つしかないが、まあこれは口と鼻を一体化させたものと考えればいいだろう。適当に中に間仕切りを入れれば、人間の口腔と鼻腔と同じようなイメージになるはずだ。それよりも僕が強く興味を感じたのは、吹き口のポジションだ。上から斜め下に向かって音を吹き込むような形になっている。

前回も述べたとおり、鼻メガホンをうまく使うには吹き口のポジションを高くとる必要がある。口蓋垂や口蓋帆の後ろから息を吹き込むことで、口だけでなく鼻もメガホンとして活用できるようになるからだ。上の写真でiPhoneが差し込まれている部分は、まさにその理想的な吹き口のポジションなのだ。

自分の後頭部に、貯金箱のコイン投入口に似た大きな切れ目が水平に開いている様子を想像してみてほしい。そこにスマホを斜めに差し込むと、鼻の奥のちょうどいいポジションにスマホの底のスピーカー部分がくる。そこを吹き口として、口と鼻の両方をメガホンとして機能させるイメージだ。

この角度で吹き口を設定すると、いやでも鼻メガホンにも息が入らざるを得ない。もちろん一部は口メガホンにも向かう。だから自然と鼻・口両メガホンが同時に響くのだ。

これに対し、日本語では一般に吹き口がのどの奥の低い場所に設定されていて、角度はやや上向きである(下の青いメガホンの感じ)。息は口メガホンだけを鳴らすために使われ、鼻メガホンにはほとんど息が入らない。

10000184-sRotate
https://www.ring-g.co.jp/item/10000184.htm

多くの人が抱える問題は、高いポジションに普段とは別の吹き口があることをまったく認識していない、という点だ。だから、英語で多用される鼻メガホンは眠ったままになっている。低い吹き口のままいくら英語らしい声を出そうとしても、そもそも息の通り道が違うのだからうまくいくはずがない。のどで発声せよ、などと言われてもうまくいかないのは、のどを意識している限り吹き口の位置は低いままで、鼻メガホンが使えないからだ。どうせならのどではなく、鼻の奥に意識を移したほうがよほどうまくいく。腹式呼吸をしなさい、などというアドバイスもそれと同じで、吹き口の高さが低いままだったら腹式呼吸なんかやっても何の意味もない。実際は順序が逆で、吹き口を高い位置に保持しようとすれば、いやでも腹式呼吸になるのだ。

まずはこの吹き口のポジションの違いをしっかりと意識に植え付けよう。そして、高い吹き口から鼻と口の両方に息を吹き込む、という、従来日本人にはあまりなじみのなかった感覚に、一刻も早く慣れることだ。

これができるようになると、英語だけでなく日本語の発音・発声も見違えるように変化する。好き嫌いはあるかもしれないけどね。そういえば最近のナレーターやアナウンサーなどの声を聞いていると、日本語でもすう勢として鼻メガホン系の声が勢力を伸ばしつつあるようだ。これを日本語として聞きやすくするには、特に子音に関して英語と少し違う工夫が必要だが、吹き口の高さの違いを克服する困難に比べれば、さほど難しいことではない。

もちろん歌声も劇的に変化する。発声が見違えるほど楽になり、声域も広がるのだ。

僕たちはみな鼻と口といういい楽器を持っている。だから、その両方を自然と響かせるように努力したほうがいい。チープなプラスチックのメガホンで応援団みたいに力んだ声を張り上げ続ける必要はどこにもないのだ。声はもっと楽に出る。変えるべきものはただ一つ、頭の中の意識だけである。

 

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「鼻メガホン」と母音・子音の関係

前回触れた「鼻メガホン」というコンセプトは、その後いろいろと実験を繰り返してみたが、かなり使えそうだ。というか、発声の核心に相当近いところを突いているんだと思う。

要するに、英語では鼻を共鳴管として使う、というのがポイントだ。これに対し、日本語は概してこの鼻メガホンに通じる部分を塞ぐような形で発声・発音する。その結果、のど声あるいはカナ縛り発声になってしまうのだ。

いちばん肝心なのは、たぶん共鳴管に息を吹き込むポジションだろう。

ちょっと鏡を見ながら口を開けて、奥をのぞいてみてほしい。鍾乳洞から垂れ下がる鍾乳石みたいに見えるのが、口蓋垂(いわゆるのどちんこ)だ。その後ろに、鼻腔へとつながる通路が隠れている。口蓋垂の根元はカーテンみたいに口蓋の奥の左右に広がっていて(口蓋帆[こうがいはん]と呼ぶ)、これが奥へせり上がって鼻腔への通路を塞ぐ働きをする。

日本語では一般的に、気持ちを込めて発音しようとすればするほど、口蓋帆は鼻メガホンの入り口を塞いでしまう。極端な例だが、CMなんかで俳優が冷えたビールをくーっと飲んで、そののどごしにたまらず出す「あ゛ーッ」というため息混じりの声なんかは、まさに口蓋帆が完全に鼻メガホンの入り口をブロックして出す音だ。逆にいうと、この口蓋帆をリラックスさせて自由にコントロールできれば、鼻メガホンに息を通して共鳴を付け加えることができる。これが第1のポイントである。

しかし、いくら口蓋帆を弛緩させて息が鼻腔へ通りやすくなっても、のどから出る息がほとんど全部口の方向へ向かってしまうと、鼻メガホンはないも同然だ。だから、意識的に息の出所を口蓋垂(および口蓋帆)の裏側にもっていくようにする必要がある。つまり、肺から上ってきた息が前方向に向きを変えるポジションを、普段よりかなり高くするよう心がけるのだ。これが第2のポイントである。

前回の説明では、口メガホンと鼻メガホンの吹き口がのどの低い位置にあるように図示したが、これに少し微調整を加えておきたい。英語的な発声では、鼻の奥、口蓋帆の裏あたりの高いポジションに吹き口を設定し、そこから鼻メガホンと口メガホンの両方に息を吹き込む、というイメージのほうが自然なように思うので、そのように修正したい。(吹き口が1つなので、口メガホンと鼻メガホンは常に同期することになり、コントロールすべき項目が1つ減るのも大きなメリットだ。)
voice3s
これに対し通常の日本語は、低いポジションの吹き口から口メガホンにだけ息が流れ、鼻メガホンは塞いで使わない、というイメージである。
voice4s
さて、第2のポイントとして挙げた「吹き口を高いポジションに設定する」という点は、以前から述べてきた「発声ポジションを高くとる」という話と無関係ではない。というか、本質的にはかなり近い。ただし、吹き口はあくまで息の入り口であって、共鳴が作られるのはメガホンに息が入ってから後なので、吹き口は発声ポジションよりもだいぶ後ろにくることになる。

したがって、吹き口をコントロールするにはこれまでとはやや違った弛緩が必要となる。まず、口蓋垂と口蓋帆の位置を目で見て確認しておこう。そして、口蓋垂のちょうど真うしろあたりに口・鼻両メガホンの吹き口を置くようにイメージしよう。フーッと柔らかく息を吐きながら、息が口蓋垂や口蓋帆に当たって上下に二分割され、半分は鼻腔に、半分は口腔に流れるようすを意識してみよう。うまく息の流れが分かれたときには、口蓋垂と口蓋帆が弛緩しているので、その感覚をしっかり覚えておくとよい。無理に鼻に息を通そうとすると、今度は口腔が舌で塞がれる恐れがあるので、なるべく無理な力を入れずに鼻と口に平等に息を流すよう練習するとよい。

さらに言えば、鼻腔に入った息をさらに左右に分かれさせるよう意識すると、不思議と抵抗が少なくなり、驚くほど流れがよくなる。これもぜひ試してみてほしい。鼻メガホンを左右2本に分けて、ステレオで鳴らすような感覚である。(鼻の穴は2つあるので、鼻メガホンも同様に2つあると思えばいい。)

フーッという息をうまく鼻と口に吹き込むことができたら、次はヘーッという無声音で試してみよう。日本語的な「ヘー」だと、まず鼻には息が入っていかない。吹き口が低すぎるのだ。吹き口を高く意識して、口の上半分と鼻だけでヘーッと柔らかく息を出すようにする。

これがうまくできれば、もう鼻メガホンと口メガホンの二重唱はできたも同然だ。日本語のヘーッとずいぶん感じが違うことをしっかりと味わおう。

さらにヒーッ、ホーッでも同じように練習していこう。

そして最後にハーッを同じく無声音で練習する。aは鼻メガホンを使った時にいちばん違和感がある母音なので、この練習は最後にもってきたほうがよい。

鼻メガホンを封印した普通の「はひふへほ」と、鼻メガホンを使って発音する「ハヒフヘホ」を聴き比べてみると、後者のほうはいつもの日本語とはだいぶ違って、英語っぽい音に聞こえるはずだ。そしてもう1つ、母音だけではなくhの子音も、日本語のそれとはまったく違った音に聞こえることにお気づきだろうか。

実は鼻メガホンを併用すると、子音のクオリティも激変するのである。

日本語の子音は、基本的に口メガホンだけで発音できてしまうし、吹き口のポジションも低い。

これに対し、英語の子音はたいてい鼻メガホンを併用し、吹き口のポジションも高い。そしてもう1つ重要なポイントは、子音を作り始める場所が鼻メガホンの吹き口と一致する、という点だ。英語ではどの子音を発音する場合でも、まず鼻メガホンの吹き口からその子音を作るよう意識することが大切なのである(国井の経験則)。

要するに、吹き口さえしっかり設定してコントロールすれば、それ以外の箇所はあまり考えなくてもうまく発音できるのである。のどにも舌にも唇にも、一切余計な力を加える必要はない。吹き口をうまくコントロールしながら発音するだけで、自然とリラックスした豊かな響きがついてくるのである。つまり、通常の日本語に比べて圧倒的に省エネで発声・発音ができる、というわけだ。

先ほどの「ハヒフヘホ」(h)の例にならって、もう1つ「サシスセソ」(s)も実践しておこう。

まずふつうに「さしすせそ」と日本語で発音してみる。

次に、鼻・口両メガホンの吹き口を高く設定して、特に鼻メガホンを左右2つ使うよう心がけながら、「サシスセソ」と発音してみる。その際、sの発音が始まるポイントを、メガホンの吹き口に一致させ(かなり口腔の奥深く、しかも高いポジションになる)、吹き口や流れる息の周囲をsの音が囲むようにイメージしながら発音してみよう。タバコの煙でわっかを作るようにsを発音する、と考えてもよい。

日本語では普通、開いた口の真ん中か少し前でsを発音する感じなので、それに比べるとずいぶん奥でsの音を作り始めることになる。しかも、常に母音の外側を子音が皮のように包んでいる感じにしたい。焼き鳥の串みたいに子音が母音の真ん中を貫き通すようだと、日本語の音になってしまう。

この子音の出し方を身につけて、すべての子音に適用してみよう。それができるようになれば、もう英語の子音は恐くない。僕が提唱するこの子音の発音則をマスターしてしまえば、英語の母音も同じように楽々と出せるようになる。真にカナ縛りから脱却できる日は、すぐそこまで来ているのだ。

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