thとl(エル)の相似性

thと舌の使い方について前回述べたが、このやり方がほぼそのまま応用できる別の子音がある。日本人が苦手とするl(エル)だ。

これまで説明してきた新しいth発音の舌の形は、実はlを発音するときの舌の形と非常によく似ている。どちらも、舌先をやや丸くすぼめるようにとがらせて軽く突き出し、舌の左右にスペースを作るよう意識する点は同じだ。

thとlでは、舌先を配置する場所がやや異なる。lの場合は、上前歯の付け根、歯茎に近いところに舌先を当てることが多い。発音するときは、舌先をあまり歯に強く押しつけず、むしろやや引き気味にしながら、舌の左右両側に息を通すようにする。その際、舌の上側には息を通さない。こうして作られる有声音がlになる。lの音を十分に響かせたら、最後に舌先を前歯からポンと放してフィニッシュしてもよい。

やってみると、舌先の位置はthの位置からあまり大きく変えないでもlが発音できることがわかるだろう。舌のフォームはほぼthのままでよい。舌先と上前歯の間のスペースをわずかに調節するだけで、thとlを発音し分けることができるのだ。

要するにthとlの一番大きな違いは、舌先と歯の間の空間がブロックされる割合なのである。

lの場合は、この空間が100%ブロックされ、息は舌の左右だけを通っていく。なので、lでは舌の先端が歯に触れた状態をわりとしっかりキープしておく必要がある(ただし舌は力ませないこと)。

これに対し、thでは舌先と歯の間の空間が左右からくさび状に空いていて、そこに息(声)が通る(これは前に指摘していなかった点だが、補足する必要があると思われるので追加しておく)。といっても、舌先の中央付近はほとんど歯との間に空間がないくらいにしておくほうがよい。ここが開きすぎると締まりのないthになってしまうので、なるべく舌先の中央よりも左右の端に近い部分を開けるようにし、全体の開き加減をうまく微調整しよう。絵文字にすると、thの舌先と上前歯の間の空間は >=< 、lの場合は >-< といった感じだろうか。

すでにlの発音がうまくできている人は、lの舌のフォームのまま舌先を上前歯の先端に軽く当てて、舌の両脇から息や声を出せば、容易にきれいなthが発音できるだろう。これはlとthの舌のフォームに互換性があるからだ。lは本来舌の両脇に息を通して音を出す子音なので、これと同じ要領でthを発音してみれば、両者の相似性がいっそうよく理解できるはずだ。

前回thの発音で舌をリラックスさせる方法を示したが、それと同じ要領がlにも当てはまるので、試してみてほしい。ついでに、それと逆の方法で舌を緊張させて発音してみるのもよい経験になる。カナ縛り発声との対比が実感できるからだ。

前回とは逆に、舌を緊張させてカナ縛り声でthやlを発音する要領を以下に示す。
1. 下あごに力を入れて突き出すようにする。
2. 舌をなるべく横に広げてその両脇にスペースがなくなるよう意識し、息を中央からモノラル感覚でリリースする。
3. 舌全体を前に突き出そうとする衝動にまかせ、舌先をなるべく前に出したままにする。
4. その結果、舌の付け根(のどの奥)の左右が緊張し、カナ縛りが完成する。

これに加えて、のどを意識して発声ポジションを低くすれば、もう完ぺきなのど声だ。(皮肉を込めているので誤解なきよう。)

参考までに、thinkとlinkを1.カナ縛り発声と2.脱カナ縛り発声で言うとどう聞こえるか、比べておこう。

 

音声サンプル

ついでながら、「英語で朗読!」サイトに掲載している「赤毛のアン」オーディオブック作成プロジェクトがほぼ完了に近づいたので、興味のある方はそちらもお聴きください。

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な お、このブログで公開しているメソッドは僕が苦心してたどりついた知的財産なので、無断借用はしないようお願いしたい(もちろん個人で発音改善などに利用 される分には大いに歓迎するが)。以前僕が別のブログで音読について綴ったことを黙って本に盗用した人がいて、遺憾に思ったのでひと言。
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